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わたしのこと
本を読むのが好き 本のある空間が好き 図書館の空気が好き スタイルのある本屋が好き そんなわたしの 本に関する気ままな雑記 HN:マリ (1961年生まれ) 福岡県在住 愛車はミニクーパー♪ 気ままなまいにち ネームカード
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2012年 01月 23日
2010年4月~2011年3月まで毎日新聞に掲載された「日本新(ネオ)カルチャーを歩く」というルポエッセイに これまで各媒体に発表されたエッセイをまとめたもの。 「ネオカルチャー新発見」は、 ご本人が興味の赴くまま好きなところへ取材へ行っただけあって どの回もとっても楽しそう。 他にも本や映画のこと、日々の出来事などの身辺雑記は 辻村さんの人となりが垣間見えてとても興味深かったです。 あと、特別収録として4編のショートショート&短編小説が掲載されてます。 その中の「さくら日和」は別のアンソロジーで既読でしたが、 改めて季節感あふれるいいお話だな~と思いました。 そうそう! あとがきを読んでわかったのですが、辻村さんご結婚&出産(昨年)されていたのですね! 知らなかったな~。 春には新刊が出るらしいので、今から楽しみ♪ 2012年 01月 19日
真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、 人間の記憶が見えた。 強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。 ある日、 真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。 カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。 父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。 しかし、真也の目には、まったく違う景色が見えた・・・・・・。 上記は演劇集団キャラメルボックスで上演された『ヒア・カムズ・ザ・サン』のあらすじ。 そのあらすじから有川さんが着想を得て執筆した物語を二編収録。 ひとつはあらすじだけから生み出した『ヒア・カムズ・ザ・サン』 そしてもうひとつは舞台を観た上で執筆したという『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』 どちらも人物名や大枠は共有しているけれど、話そのものはまったくの別物です。 ただ、不思議な力を持つ真也の葛藤とカオルと父親との葛藤は設定は違えども共通。 物語全体から人間関係の難しさや人と人の絆の奥深さが立ち上ってくる。 悩みながらも大切な人のために奔走する真也の誠実な人柄がとてもよかったです。 思いやりあふれる真也にこんなに愛されて・・・・カオルはきっと幸せになるね。 舞台も観てみたかったな~。 2012年 01月 18日
舞台は、さびれつつある地方都市の花咲小路商店街。主人公の亜弥は両親が始めた小さな英語塾で講師をしている。 母親の志津はすでに亡くなり、 隠居している父親は日本に帰化している英国人。 今は矢車聖人と名乗る御年70歳の彼は、 昔イギリスで伝説の大泥棒として名を馳せた人物だった。 泥棒といっても悪党ではない。 英国では未だに「最後の泥棒紳士”セイント”」と呼ばれ ドキュメント番組で時々特集が組まれたりもする。 1950年代末から60年代にかけて英国中の美術品や金品を上流階級から盗みまくり、 決して捕まらなかった世紀の大泥棒なのだ。 日本に帰化して40年、花咲商店街にもすっかり馴染んだ聖人が 花咲商店街に突如訪れたピンチを実にスマートな方法で救うというアットホームな物語。 いつもの小路作品らしくユーモアと温かみにあふれた安心して読めるお話。 こんなになにもかも上手くいくわけないと思いつつも、 その予定調和的で微笑ましい終わり方には胸のすく思い(笑) 英国人らしく散歩と紅茶を愛する聖人のた佇まいがとっても素敵。 彼の愛車がミニクーパーというのも私的にツボでした♪ 2012年 01月 16日
さびれた地方の温泉街に住む中学二年の逸夫はもやがかかったような日々に悶々としながら暮らしていた。 そんな時、同級生の敦子がいじめにあっているのに気づく。 敦子はひとつの「嘘」を計画し、逸夫に協力を求める。 一方、逸夫の祖母・いくは大きな秘密を抱えて生きてきた。 祖母が話していた自分の生立ちがある時嘘だったと判明すると その直後から矍鑠としていた祖母は生気を失ってしまう。 逸夫は二人の絶望をどうにかして救いたいとある計画を練る。 逸夫の揺れ動く心情描写や雨や木々や光といった自然現象の描写の美しさが秀逸。 特に、物語の最初の方で祖母が逸夫に教える「天泣」(てんきゅう)という雨の描写は見事。 それが感動的で美しいラストシーンに繋がって・・・・。 誰もが生きていくために必死でついている「嘘」をテーマにした切なく哀しい物語。 それでもラストには小さな光が見えて心穏やかに本を閉じることができました。 2012年 01月 10日
人の夢を可視化しデジタル化して記録し、それを「夢札」として保存できるようになった近未来。 その夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、 すでに亡くなりこの世にいないはずの古藤結衣子を見かける。 彼女は浩章のかつて兄の婚約者で 予知夢を見ることが出来るという特殊な能力を持っていた。 それ故にある事件に見舞われ死んだはずだったのだが・・・。 そんな中、 全国各地で小学生が集団白昼夢を見るという事件が起きた。 彼らの夢札を解析しその原因を突き止めるために浩章は現地に向かう。 そこで浩章は結衣子の幻影と向き合うことになる。 事件と結衣子との関連性は・・・・結衣子は生きているのか・・・・。 「夢」をテーマにしたミステリーとファンタジーが合わさったような不思議で抒情的な作品。 謎めいた展開に差し挟まれる浩章の結衣子に対する思いが切なく 終章の春のイメージが吉野の見事な桜とあいまってなんとも幻想的で美しい。 作中たびたび記述される作者の夢に対する考察はなかなか興味深いものがありました。 夢は外からやってくる・・・・なるほどそうかもしれませんね。。。 2011年 12月 30日
今年読んだ本は87冊。
ここ数年、年間100冊以上は読んでいたんですが 今年はそれに比べるとかなりペースダウン。 特に9月10月が少なかったですね~。 まあその時期、心情的にのんびり本を読む状態じゃなかったというのもあるけれど。。。 他のことに気を取られていると読書タイムが減っちゃいますね(笑) そんないろいろあった一年でしたが、 読了本を記録した手帳を見ながら選んだ印象深かった10冊は次の通り。 『砂の王国 上・下』 荻原浩 『下町ロケット』 池井戸潤 『人質の朗読会』 小川洋子 『ピエタ』 大島真寿美 『ロマンス』 柳広司 『この女』 森絵都 『マスカレード・ホテル』 東野圭吾 『水底フェスタ』 辻村深月 『舟を編む』 三浦しをん 『平成猿蟹合戦図』 吉田修一 どの本も読書の醍醐味を存分に味わえる10冊でした。 来年も素晴らしい本に出合えますように。。。 2011年 12月 29日
女子高生、OL、フリーター、元野球選手、主婦・・・市井の人々の冴えない日々と少しの希望を 優しい目線で軽やかに描いた短編集。 「狼なんてこわくない」 「夜中に柴葉漬」 「野和田さん家のツグヲさん」 「感じてサンバ」 「どきどき団」 「テディベアの恩返し」 「踊り場で踊る」 「一匹羊」 どのお話もラストにちょっと元気になれる小さな希望が用意されています。 特に心に響いたのは、 携帯電話を持たない高校生同士の遠距離恋愛を描いた「狼なんてこわくない」 恋することの喜びと不安をこの上なく丁寧に描いた清々しいお話。 相手を信じ人を真っ直ぐに好きになるということの尊さを改めて感じた素敵なお話でした。 2011年 12月 28日
軽い気持ちで娘の小織にフィギュアスケートを習わせていた梨津子だったが、夫と離婚し引っ越し先の名古屋で フィギュアスケートの名コーチに小織の才能を見出され 娘を支えることに生きがいを感じ始める。 スケートクラブ内の異様な慣習や母親同士の付き合い、 コーチとの指導方針を巡っての軋轢、スケート費用の捻出など 梨津子は日々様々な労苦を感じながらも 生き生きと小織のために全力を尽くすのだが・・・。 ちょうどフィギュアスケート全日本選手権の真っ最中に読んでいたので、 リンクに華麗に登場するスケーター達と小説の内容が重なり感慨深いものがありました。 特に浅田真央選手を彷彿とさせる希和という女の子がいて 物語のクライマックスシーン、彼女の大舞台での演技内容の描写には思わず涙。。。 選手にとって一番大切なのは、順位や点数ではなく、 自分自身を氷の上で表現し切ること。 そうすることによって、お客さんに一人の自分というものを観てもらうこと・・・・・。 どの選手にもそれぞれドラマがあり、 母娘二人三脚で挑む想像以上に厳しいフィギュアの世界。 この時期にこの小説を読めて本当によかったと思いました。 2011年 12月 22日
夜の新宿歌舞伎町。そこで起きたある轢き逃げ事件をきっかけに 普段出会うことのない8人が引き寄せられていく。 事件の鍵を握る世界的なチェロ奏者の湊圭司、 その姪で美大生の友香、湊のマネージャーの園夕子 韓国バーのママ・美姫、そこで働くバーテンダーの浜本純平、 純平の友達のホストの真島朋生、 その妻で子長崎から子連れで上京したホステスの美月、 そして秋田に住む湊の祖母のサワ。 轢き逃げを目撃していた純平が朋生とあることを企む。 それが思いもよらない方向へ転がっていき、物語は予想外の展開を見せ始め・・・。 まさにこれは狡賢い猿に騙された蟹とその仲間たちが力を合わせ闘った復讐劇。 登場人物それぞれの閉塞感を描く前半部から希望のストーリーへと展開していく後半部。 あれよあれよという間に広がっていく驚きの展開にページを繰る手が止まらない。 そして民話の猿蟹合戦がそうであるように、ラストはスカっと爽快。 陰の主役とも言える園夕子の活躍ぶりが素敵でした。 2011年 12月 21日
ファッションジャーナリストを経てエッセイストとなった著者の45歳からの波乱に満ちた10年間をさらけ出したエッセイ集。 鬱状態だった40代半ば、積み重ねてきたキャリアを捨て 夫の転勤に伴い家族とともに中東へ旅立つ。 3年後、母親の介護のために単身帰国。 そして壮絶な在宅介護の末母親を看取る。 妻として、母として、娘として、そして女として・・・ その間に感じ取った様々な感情を赤裸々に綴っている。 十数年前、彼女がファッションエッセイストとして一世を風靡していた頃 ファッションを精神論から語るその鋭い視線に30代半ばの私はかなり傾倒していました。 装うことの意味、おしゃれの必要性、服を通して知る自分自身など・・・ 自らの体験談を美しい言葉で綴った某女性誌の連載ページの切り抜きは私の宝物。 もちろんその頃発売された彼女の著書は全部持っています。 しばらく彼女の新作を見かけないなぁ・・・と思っていたら こういう形で人生を歩んでいらしたんですね。。。 少しだけ先輩の彼女が送ってきた人生の歩みは これから私にも訪れるであろう未知の世界への力強い指針となりました。 2011年 12月 19日
世田谷にある資産家の家で小学四年生の息子の家庭教師を依頼された聡子。 ある日、聡子はその屋敷の広大な庭を散策中に 離れに住んでいるという青年に出会う。 会うたびにその性格が激変する青年に 最初は戸惑う聡子だったが いつしか彼に惹かれていく自分に気づく。 だがしかし、彼にはある秘密があった・・・・。 この作品、常に新しいテーマに挑戦してきた百田さんが初めて挑んだ恋愛小説だそうです。 新聞広告には、恋愛小説史上、これほどせつなく狂おしい結末があっただろうか。 失恋でも、破局でも、死別でもない。かつで誰も経験したことのない永遠の「別れ」。 という謳い文句。 さらに著者のこのラストが書きたくて初めて恋愛小説に挑戦しましたとの直筆の文字。 確かに普通の恋愛小説とはかなり趣が違っていました。 どういうふうに書いてもネタバレになるので詳しいことは書けませんが、 人が人を好きになるという根本的な問題にあるテーマを用いて深く迫っています。 もし自分が好きになった人がこの青年のような人だったら・・・・と考えると、 ちょっと空恐ろしくなるのでした。 2011年 12月 12日
ブエノスアイレス近郊の日系人町で生まれ育った佐和子とミカエラ姉妹。 彼女たちは留学のため訪れた日本で大学時代を過ごす。 幼いころからボーイフレンドを共有してきた二人だったが、 日本で達哉と出会い佐和子は初めてそのルールを破る。 達哉は佐和子を選び二人は結婚するが、 ミカエラは新しい命を授かりアルゼンチンに帰国する。 日本とアルゼンチンでそれぞれの生活を送っていた姉妹だったが、20年後佐和子は突然達哉に離婚切り出し 不倫相手の田淵とアルゼンチンで暮らすと言い帰国する。 佐和子、ミカエラ、ミカエラの娘で19歳のアンジェラ、 それぞれの一筋縄ではいかない恋愛を描いた物語。 相変わらずの江國ワールドです。 結婚しててもしてなくても、子供がいてもいなくても、年齢差があってもなくても、 もうそんなことまったく関係ないとばかりに気持ちの赴くまま恋に走る女たち。 理屈ではどうしようもない感情に身を任せるのが恋愛、、、 そんな当たり前のことを小説内できちんと見せつけてくれる江國さんは その時々で受け取り方は違っても私にとってはいつの時代も必要不可欠な存在です。 2011年 12月 05日
予約を取るのが難しい評判のレストラン「ハライ」そこに10月31日午後6時に偶然居合わせた人たちの それぞれのドラマを描いた6編の物語。 就職も恋愛もままならずコンビニで働き続ける青年。 認知症の症状が出始めた老婦人。 疎遠になった隣家の幼なじみが気になる女性。 ビデオを撮ってないと外へ出られない引きこもりの青年。 ホテルの厨房で働く青年の寮を 昼間のひととき使わせてくれと懇願する女性。 人の失敗を匂いで予感してしまう女性。 それぞれが誰かを連れてハライに来店するまでのエピソードが丁寧に描かれる。 喪失や欠落を感じながら日々を送る人々が少しのきっかけで前向きになっていく様は 読んでいてじわじわと心を満たし、心が洗われるような清々しさを感じさせてくれる。 ある時ある場所で誰かと何かを食べる、、、 彼らが最終的に行き着く場所が小さなレストランというところが素敵です。 しかも「ハライ」というのは、どこかの言葉で「晴れ」の意味だというのがまたいい。 おいしいものはおいしい、楽しいときは楽しい、 そのままの形で胸に沁み込むような時間を共有できたらもっとしあわせだと思う。 このフレーズは今の私の心に深く深く沁みたのでした。 2011年 11月 30日
埼玉県北西部の田舎町で連続バラバラ殺人事件が起きた。被害者の一人は元警察官のマスターと寡黙な青年・梢路が 働くスナック「ラザロ」でピアノを弾いていた成子。 もう一人は近郊に住む歯科医師。 警察は二人の繋がりを追うが捜査は難航する。 ラザロに集う写真家や地元紙の女性記者などの 常連たちもこの事件に注目するが何の展開もない。 そうこうするうちに三人目の犠牲者が・・・。 被害者の遺体の右手にある共通点を見つけたベテラン刑事。 一見何の繋がりもなさそうだった被害者たちの共通点とは・・・。 読み終わってタイトルの「ピース」の意味とその表紙を見るとぞっとします。 ああ、これはそういう意味だったのかと。。。 それにしてもこういう動機で殺人事件まで発展するのかな・・・? 真相が解明されていく過程は面白くはあったけれど、 謎の青年・梢路をあそこまで描くなら彼をもっと深く掘り下げて欲しかったなぁ。 新聞の書評欄で見てすぐに図書館にリクエストし期待して読み始めた本でしたが、 なんとなくすっきりせず消化不良気味の読後感でした。 2011年 11月 28日
映画監督・柚木真喜子が海外の映画賞を受賞したという小さなニュースが新聞に載った。 それをきっかけに過去に柚木に関わった6人の女性たちが 彼女と当時の自分を振り返りそれぞれが綴った連作短編集。 OLを辞め柚木と脚本を書き映画作りに参加していた志保。 柚木の友人の後輩で当時の柚木の恋人を奪い結婚したさつき。 地元のラジオ取材を受けることになった柚木の妹の七恵。 柚木が学生時代通っていた画家の家で 昔柚木と特別な時間を過ごしたことのある亜紀美。 息子が柚木になついているのが不満な柚木が所属する事務所の女社長の登志子。 高校生の頃柚木の映画『アコースティック』で主演をつとめた十和。 6人が6人とも自分の人生は柚木に翻弄されたと感じていて、 その6人それぞれの視点によってどこかつかみどころのない柚木が描かれてゆく。 読み進むにつれて柚木という女の輪郭がぼんやりと立ち現われてくるが、 その実像は結局最後まで曖昧なまま。。。 それでも最後に用意された『リフレクション』というシナリオは、 それぞれの短編がうまい具合に調和しこの物語の締めくくりとしてなかなか秀逸。 このシナリオ、一見平凡だけど映像化すると素敵だろうなぁ~としみじみ思うのでした。 2011年 11月 24日
広島で生まれ大学進学と同時に東京へ出てきた乾は、フランス留学したものの定職に就かずヒモとして暮らす日々。 服役経験や独特の性癖を持ち金貸しを趣味とする乾は 借金の取り立てをきっかけに新潟へと向かう。 新潟でユミコという女と出会い結婚までするが うまくいかず今度は富山へと向かう。 広島→東京→新潟→富山→そしてまた広島。 自分の過去の履歴を「不愉快な本」と称する乾は 海の見える地方都市をよそ者として転々とする。 そんな乾の一人称で語られるロードムービー的な物語。 流れ流れて最終的にたどり着いた場所があんなところだったとは・・・。 ラストの章は少しだけ衝撃的。 不幸続きで暗い話ではあるけれど、乾の飄々とした語り口がそれを感じさせない。 どこまでいっても幸せになれそうもない乾が逆に爽快でもある(笑) これこそが絲山ワールドなのかも。。。 それぞれの地方都市の描き方が絲山さんらしくて面白かったです。 2011年 11月 22日
玄武書房に勤める馬締(まじめ)光也は変人として営業部では持て余されていたが、 独特の視点で言葉を捉える感性の持ち主でもあった。 そんな馬締が辞書編集部へと移動になる。 入社以来37年辞書編集ひとすじの定年間際の荒木、 日本語研究に人生を捧げる老学者・松本、 チャラ男の西岡、クールな女性契約社員の佐々木、 そんな仲間に囲まれ馬締は辞書作りの世界に没頭する。 果たして新しい辞書「大渡海」は無事出版の運びとなるのか・・・。 実に長いスパンで作られる辞書という言葉の海を彷徨いながら 「大渡海」に関わった人たちの人生を描いたハートウォーミングな物語。 それぞれの仕事に真摯に向き合う人々を描きながらも、 業界裏話や恋愛などもきっちり織り込みながらの楽しい展開。 そしてラストは静かな感動が押し寄せて・・・・。 辞書って今まで何気なく使ってきたけど、作った人のことまで考えたことなかったな~。 辞書作りに関する様々なことが実に興味深かったです。 業界話といえば、「大渡海」用の紙を開発したあけぼの製紙の モデルとなった製紙会社に友人が勤務しているので、 あけぼの製紙の営業マン・宮本くんが他人と思えませんでした(笑) 彼も若いころはこんな感じだったのかな・・・とか思ったりしてね♪ その宮本くんと編集部の新人・岸辺さんがいい感じになっていく過程がなかなか素敵。 携帯番号を交換する場面なんか妙にリアルでなんだかニヤニヤしちゃいました。 馬締さんと香具矢さんの静かな恋もほのぼのとしてよかったし。 辞書作りという特殊な世界にスポットを当て こんなに素敵な物語を紡ぎ上げるしおんさんに今更ながら脱帽なのでした。 2011年 11月 17日
川辺康之は39歳の開業医。洋服マニアで趣味はヴィンテージスニーカー収集。 妻のカオルは勤務医で救命救急の医師と不倫中。 妻に対する嫉妬心から川辺は暗い衝動に突き動かされ 水曜の夜ごとひとり暮らしの若い女の部屋へ忍び込み スタンガンと薬で眠らせレイプしていた。 レイプに遭った被害女性たちはネットを利用し 互いに連絡を取り合い川辺を追い詰めようと画策するが・・・。 紹介文に邪心小説と謳っている通り、 人間の卑小さ、軽薄さ、邪悪な感情などがこれでもかと描かれています。 その描き方はさすが桐野さん、容赦はありません。 執拗な嫉妬心、開業医としてのプライド、勤務医に対するコンプレックス、 そういった様々な負の感情の解消が連続レイプ犯とは・・・。 そういう行動に走る川辺には同情の余地はないけれど、 次第に追い詰められ破滅へと向かう姿は哀れでもありました。 こんな医者いるかもしれない・・・と思えるところがリアルで恐ろしかったです。。。 2011年 11月 15日
突然現れる恋愛の神様に恋愛力を試される男女。四級から始まり、三級、二級、準一級、一級、マイスターまで、 それぞれの級を受験する男女の恋愛模様とその結果を コミカルに描く短編集。 恋愛上手と勘違いしている女や恋愛に消極的な男、 相手に尽くしすぎる女やプライドの高い男、 本当の自分の気持ちに気付けない女、 そして自らの過去に縛られ幸せを求めきれない女など・・・。 それぞれの級の受験者は時々現れる神様と会話することで 無自覚だった自分の恋愛の傾向を知っていく。 その過程がリアルでかなり面白かったです。 おまけに巻末に「恋愛検定の傾向と対策」という ホンモノの精神科医によるそれぞれの恋愛の解説付きで至れり尽くせりの内容。 様々な恋愛模様と神様の言葉を通してふと我が身を振り返ってみたり・・・・。 なかなかためになる小説でした(笑) 2011年 11月 10日
高校一年の斉藤卓巳はコミケで出会った主婦・あんずとのコスプレ性交渉を続けている。 同級生の七菜に告白されても 卓巳はあんずのことで頭がいっぱい。 そんな卓巳の友達や助産院を営む母親など 周囲の人々のやりきれない思いを視点を変えて かわるがわる描いた連作短編集。 「ミクマリ」 「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」 「2035年のオーガズム」 「セイタカアワダチソウの空」 「花粉・受粉」 「R-18文学賞」受賞作だけあって直截的な性描写が頻出するけれど、 読み進むにしたがって性と生を真正面から見つめる真摯なまなざしに 次第にそれらのきわどい描写が気にならなくなってくる。 あんずのもうひとつの姿、七菜の家庭の事情、 認知症の祖母と暮らす友達の福永、助産院をひとりで始めた卓巳の母の思い、 そしてあんずに捨てられひきこもってしまった卓巳の思い・・・。 それぞれの複雑な状況と心情が丁寧に描かれていて彼らの思いが胸に迫ってくる。 5編ともやるせない話ではあるけれど、 それぞれのラストにはほんの少しの希望が用意されていて読後はなんだかほっとしました。
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