恋愛ではない男女の繋がり。
男女を越えた友情ともちょっと違うような気がする。
それは「同期愛」とでも言うべき
同期入社の連帯感や信頼感みたいなものだろうか。
主人公の私と彼は住宅設備機器メーカーの同期入社で、
ふたりは入社してすぐ福岡支社に配属される。
見知らぬ土地で懸命に働くうちに
いつしかふたりの間に育まれた感情は
彼らにある秘密の約束をさせ、主人公は彼の死後その約束を忠実に果たす。
ずっと福岡に住んでいて、
主人公が言うところの「福岡に本拠があるライバル会社」に
数年間勤務したことがある私にとって、
この小説はとてもリアリティがあり読んでいてすごく親近感がわいた。
福岡の街の風景も、仕事内容も、仕事の大変さも・・・。
読んでいてまるで彼らが今そこにいるような既視感にとらわれたのです。
絲山さんの作品の中では、これがいちばん好きかもしれません。