少しずつ少しずつずれ始めた夫婦の関係。
一組の夫婦の結婚から離婚に至るまでの経緯が
暑い真夏の一日を背景に描かれる。
どうしてそうなったのか、何がいけなかったのか。
ずれ始めたきっかけも理由もはっきりしない。
ただ、どうしようもない感情の行き違いだけが存在する。
修復しようとしてもかわされる。
そしてまたすれ違う。
性格の不一致とか価値観の相違とか
離婚の原因はそういう言葉で表現されることが多いけど、
きっと本当はそんな大雑把な言葉では説明できない。
そんな説明できない複雑な感情を、作品全体で表現しているような気がした。
ページをめくるごとにじっとりとした熱気が身体にまとわりつく。
陽炎が立ち昇る真夏の路上に置き去りにされたような読後感だった。